米津玄師さんが、伝統芸能の「落語」をMVで表現しています。
落語と米津玄師さんが結びつくなんて、意外に思う人も多いでしょう。
この不思議を、落語歴40年の私がわかりやすく解説します。
米津玄師さんは、落語「死神」の噺を歌で表現し、その独特な世界観と落語ならではの魅力を楽曲に込めました。
そしてついに、この落語噺が演劇として上演されることになりました。(落語×演劇コラボ)

古典落語が芝居となり、H&Aプロデュースで実現します。
会場は新宿の紀伊國屋サザンシアター、期間は4月11日から26日まで(休演日2日を挟み、昼夜合わせて実質18公演)。
落語「死神」は20分以上の長編で、冒頭で主人公の与太が死神と出会い、指示された病人の枕元に行くと死神の位置がわかります。足元にいる死神に向かって「アジャラカモクレンテレッツのバー」と呪文を唱え手を叩くと、病人は回復。与太は評判の名医となり、大繁盛して悪銭を稼ぎます。
この物語を米津玄師が歌にし、主人公は人生の虚しさを嘆きながら死を望み、そこであの呪文を口にします。
古典落語「死神」を米津玄師は、一番の見どころ、聞きどことはここだ!
米津玄師の「死神」の聴きどころは、死神に連れられて辿り着いた先で、無数の灯ったロウソクが並ぶ場面から始まる。
死神は短いロウソクがお前=与太だと告げ、生き延びるにはその火を新しいロウソクへ移さねばならないと言う。
歌詞はその情景や心情を巧みに描き出し、「ああ火が消える、火が火が消える 夜明けまた/ああ面白く、面白くなるところだったのに」というフレーズから、与太の焦りとそれを楽しむ死神の姿が浮かぶ。
落語では火を移せず演者が倒れて終わるが、その怖い結末の裏には人生の浮き沈みを感じさせる深みがある。
「じゃらくれた」という徳島の阿波弁で「ふざけた」という意味の言葉も登場。
死神に教わった方法で荒稼ぎし、再び呪文を歌った後に続く「Yeah Yeah プリーズプリーズヘルプミー」は初期ビートルズを思わせる。
この曲はドラマ「リコカツ」の主題歌「pale Blue」のB面として収録され、落語の噺を歌にしたユニークさが光る。
昭和にも同様に落語を題材にしたドラマが存在していた。
昭和落語ドラマ 「タイガードラゴン」を知ってますか。
宮藤勘九郎さん脚本のこの作品は、浅草の落語家・林屋亭どん兵衛の高座に感動した虎児が弟子入りを志願するところから始まる。
どん兵衛には、虎児が属する新宿流星会の組長に400万円の借金があり、虎児は落語を一席覚えるたびに10万円の「授業料」を支払うことに。
やがて虎児は「林屋亭小虎」としてヤクザと落語家の二足のわらじを履くようになり、毎回落語の噺のような物語が展開される。
どん兵衛役は西田敏行さん、組長役は笑福亭鶴瓶さんが務め、配役が逆ならまた違った面白さがあったかもしれない。
高座でのどん兵衛は本物の落語家さながらで、虎児役のTOKIO長瀬さんは破天荒さと落語の魅力を見事に表現。
高座シーンは「浅草演芸場」で収録され、寄席の人々も協力。
米津玄師の「死神」は「新宿末廣亭」で収録され、テーマ曲にはクレイジーケンバンドの「タイガードラゴン」が使用されている。
この曲が先に生まれ、そこからドラマが生まれたと言われ、落語と音楽が意外なほど多くの場面で交わる。「新宿末廣亭」や「浅草演芸場」は江戸の情緒を今に伝える魅力的な場所だ。



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